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寄稿文 カナダ - 日本

赤道直下で迎えた春分の日
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    青森で発行されているタウン誌

         「ゆきのまち通信」
         

       
           2012年5月号

       『世界のまち』 コラムに寄稿

    アンデス山中の町

     国の東西に赤道が貫かれているエクアドルは、日本の23ほどの面積だが、地理的に実にバラエティーに富んでいる。中央には南北にアンデス山脈が累々と続き、数千m級の山々も幾つかある。首都のキト(キは真中、トは世界を意)も海抜2800mに位置する。

    赤道公園

     この国を訪れたのは3月半ばからの一ヶ月ほどで丁度雨季の季節。午後には激しい雨が降るものの、朝夕は涼しく真昼にはちょっと汗ばむほどの陽気で過ごし易い。

     何はともあれ赤道の走る国に来たとなれば、78年に世界遺産になった歴史の色濃い旧市街もさることながら、赤道公園に行くのが当国ならではの観光と言える。

    2つある赤道公園

     ところが、ここにはその名所が2つある。数百mを隔て一つは「本物」、一つは「偽物」と言われる。

     まずは後者だが、これは18世紀の半ばにフランスやエクアドルの科学者たちが星座学などを頼りに設定した場所で、立派な記念塔と関係者の胸像が並びその功労を讃えている。

    赤道公園





    赤道公園



    一方
    25年ほど前にGPS等の新テクノロジーを使って発見された位置には野外博物館もあり、ここが本当の赤道ラインの通る場所と言うわけだ。歴史が分かれば双方とも興味深い。

     奇しくも訪れたのは昼と夜の長さが同じといわれる春分の日。赤道直下であるため、昼12時には太陽が真上に位置するため自分の影が全く見えなくなる。

    赤道公園

     この日は、土地の人々には季節の分かれ目の重要の日。特別の香を焚きながら来たる年の安泰を祈るシャーマンの声がアンデスの山々に響き渡った。

    赤道公園

       
















    | - | 07:26 | comments(0) | trackbacks(0) | - | ログピに投稿する |
    南米・エクアドルでの「人糞事件」
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        トロントの女性グループ
        季刊誌『華やぎ』に寄稿
       
        
         

          2012年春号


      エクアドル


      ご存知の方も多いと思いますが、エクアドルと言うは国の
      東西に赤道が走り、南北にはアンデス山脈が国の中央を連々
      と連なっています。

      首都のQuito(キト)は、その山の上の海抜2800mに位置
      しており、今私が滞在している街
      Cuenca(クエンカ)は、
      首都から南に少し下がった所にありますが、ここも海抜
      2500メートルなのです。

      トロントを出発する前には、空気が薄いことで息苦しさを
      感じるかと思ったのですが、その心配は全くありません。

      ただ
      1978年に、世界遺産に認定されたキトの旧市街のはずれ
      にある
      200mほどの丘のエンジェルの立像が立つ場所は、
      海抜が
      3000m以上になるためちょっと息切れがしました。
      (ちなみに富士山は
      3776mです)

      エクアドル

      南米は以前にベネズエラに行ったことがあり、マルガリー
      タ・アイランドに滞在して休暇を過ごし、途中セスナ機で
      アマゾンの原生林の上を飛びエンジェル・フォルスへ出か
      けたことはあるのですが、それ以外は今回が
      2回目の旅に
      なります。

      エクアドル


      あちらこちらのツアーで得た知識によれば、エクアドル、
      ペルー、ボリビアなどは、インカ帝国が繁栄を極めた地域
      だったものの、スペインによって滅ぼされたため文化を失っ
      たのです。

      特にエクアドルなどは紀元前9000年にも遡る歴史を持って
      いるのだそうです。スペイン征服時代の跡もまだ沢山残さ
      れていて、文化や歴史を知れば知るほど興味は尽きません。

      まあこんな知識は観光すれば誰にでも分かることですが、
      さてここからは私が体験した稀有な物語を書きましょう。

      エクアドル

      今もし食事をしながら、或いはスナックなどを食べながら
      このBLOGを読んでくださっている方は、まずそれを食べて
      しまってから以下をお読みください。

      そのユニークな体験とは以下のように始まりました。

      トロントを出発する前に、私は首都(キト)にある
      在エクアドル日本国大使館にインタビューを申し込ん
      でいました。この国についてのブリーフィングをして
      欲しかったからです。快いメールを頂いたのですが、
      それはまだキトの地理が私にはほとんど定かでなかった
      到着2日目だったのです。

      この日はアポに間に合うようにホテルを出て、ほんの34
      ブロックほど歩いた所で、私はかぶっていた帽子に何かが
      落ちたのを感じました。

      「あれっ?!」とは思ったのですが、そのまま23歩歩み
      を進めていたら横を歩いていた夫が「
      Keiko, You got it!
      と叫ぶのです。

      その時にはすでに私もピンと来て「まさか!」と思ったも
      のの「
      I got it, didn’t I?」とオオム返しに叫びました。

      何をされたと思いますか?

      私の帽子から肩、背中、腰に掛けて「人糞」を振りかけら
      れたのです!!!

      その時は、鳥の糞みたいに建物の2階あたりからその
      異臭物が落とされた思ったのですが、後から良く考えて
      みると、後ろから歩いて来たエクアドル人の初老の男性が、
      おそらく何かの容器に入れた「言葉を持って説明不可能な
      ほど臭〜い」商売道具を私に向けてサッと降りかけた
      ようです。

      でも私は慌てませんでした。

      何故ならトロント出発前に、インターネットを屈して
      エクアドルに関する情報を集めていたとき、まったく同じ
      経験をしたアメリカ人夫婦の体験談が載っていたのを読ん
      だからです。

      その時は「まあ、何と!!!」と驚きましたが、まさか
      自分がそのターゲットになるなんて、当然ながら夢にも
      思いませんでした。

      もちろんそのアメリカ人夫婦は、大変に慌てて近くの
      公衆トイレに駆け込み汚物を拭き取ったのですが、その間に
      そばに置いた手荷物をそっくり盗まれた、という不幸の
      ダブルパンチを受けたのです。

      よく聞くのは、レストランで旅行者がケチャップを掛け
      られるという事件ですが、ここでは「人糞」でした。

      もちろん何人かがグルになっての犯行だったことは疑う
      余地がありません。

      もし私たちはこの体験談を読んでいなかったら、おそらく
      大慌てこのアメリカ人夫婦と同じ事をしたかもしれません。
      でも不幸中の幸いは「知識」があったことで、夫の
      Calm down, Keiko, you will be alright」の言葉に落ち着きを
      保ちホテルに急ぎ戻りました。

      でも後ろから初老の男性が、布を手にしきりに「何か付いて
      いるよ。拭いてやるよ」と言うしぐさをして追っかけてくる
      のです。もしこれを受け入れていたら、その間に私のポケッ
      トやバッグから貴重品などを抜き取る積りだったので
      しょう。

      ホテルのフロントで働くエクアドル人もびっくり!!!
      「聞いた事も見た事もない・・・」と言葉が継げない様子
      でした。

      そんなこんなで大使館のアポには間に合いませんでしたが、
      翌日に出かけたところ「落ち着いて処理をしたことが大事に
      ならずに済んでよかったですね」と言われました。

      エクアドルで良くあるのは、現金を銀行から下ろした人を
      目印にして後をつけ、それを奪うと言った事件で、まったく
      珍しくないとかです。

      しばらくして日本大使館のサイトを見たら、この手の事件に
      対しての警告は載っていましたが、「人糞事件」への注意は
      なく残念に思いました。

      でもこれで私たちのエクアドルの印象が悪くなったでしょう
      か? 答えは「いいえ」です。 

      もちろん気持ちの塞ぐ形容しがたい経験でしたが、むしろ
      私は、そこまでして観光客をターゲットに金品を奪わなけ
      ればならない人々の生活の貧しさに、もっと気持ちが塞ぎ
      ました。


      何しろ一ヶ月の最低賃金は月
      292ドルの国です。
      (ある友人には「ケチャップを買うお金も惜しかったのか
      もね」なんて冗談を言われました。(笑)

      国民の9598%はカトリックで、どの街も「犬も歩けば
      教会に当たる」と言っても大袈裟ではないほどカトリック
      教会にぶつかります。その全ての教会で、日曜日には朝だけ
      で3回のミサがあるのだそうです。

      エクアドル

      私も日曜日ごとに違った教会に出かけて見ましたが、
      それは、それは溢れんばかりの信者の数でした。そして
      献金に一セント(ここはアメリカドルが通貨)も出さない
      人が一杯いる反面、聖体拝領には長蛇の列・・・・・。

      あの初老の男性も、日曜ごとに必ずや教会に出かけ膝を
      つき祈りをすることでしょう。

      また週一回はコンフェッション(告解)をするのかも
      しれません。この週はきっと「観光客に人糞を掛けま
      した、お許しを!でもお金は盗みませんでした」とでも
      言ったのではないでしょうか。

      エクアドル

      でも貧しい国で起こる「人糞」をかけて人のものを盗む
      事件と、一応まだこの国ほどには貧しくない日本で、
      「オレオレ詐欺」で人のものを盗むのとどこが違うのか? 

      事件以来私の頭のなかではこんな思いが去来しています。

       

      エクアドル

       







      | - | 12:47 | comments(0) | trackbacks(0) | - | ログピに投稿する |
      「名誉殺人」事件
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          毎週金曜日発行の社会派週刊誌「週刊金曜日」                      
                月一回カナダ事情を発信      
                          
           
            第13回 2012年2月24日発行



                      名誉の殺人

        モントリオールに経済移民したアフガニスタン出身の裕福な一家が、〇九年に起こした事件の判決が今年一月末に出た。

        五十余人もが証言した裁判の後、陪審員が出した判決は「第一級の殺人罪(終身刑)二五年間仮保釈なし」であった。

        事件の内容は「名誉殺人」。イスラム系では、女性が親の決めた相手以外と恋愛をしたり性関係を持ったりした場合(強かんでも)、父親や兄弟らが「家族の名誉を汚した」と殺すことがいまも行なわれている。  

        この一家は、夫(五八歳)、子のない最初の妻(五二歳)、二番目の妻(四二歳)と七人の子どもが同居し2人の妻は反目し合っていた。

        〇九年六月末、夫と二人の妻、上の娘三人(一九歳、一七歳、一三歳)、長男(二一歳)は二台の車でナイアガラの滝見物に出かけ(残り三人の子は留守番)、帰途トロント近郊のモーテルに一泊した。

        運河のある風光明媚な街は観光スポットだが、真夜中に人気はない。この夜、三人の娘と最初の妻が乗った車が、運転を誤り運河に転落。

        「運転の腕が未熟な長女が三人を誘ってモーテルを抜け出して起こした事故」と長男が警察に通報した。

        しかし、辻妻の合わない供述やもがいた形跡がないことなどから、殺人後に車ごと運河に落としたことが判明。親の意にそぐわない異性との付き合いをした娘たちを「売女」と呼んでいた父親や長男、2人目の妻も加担した犯行とわかった。

        父親は犯行後、「悪魔が毎日墓に糞をすればいい」と言ったなどが報道され、米国や欧州、中東からもメディアが押し寄せた。

        事件後の二年半の検証で見えてきたのは、狭量な父の家庭内暴力、男性優位、女性軽視の思想、カナダでは承認されない一夫多妻を維持する家族像だった。

        生前、殺された三人の娘たちは身の危険を感じ、シェルターをはじめ各種の公共機関に助けを求めていた。

        通った学校もできる限り手を尽くしたが、異文化の家族に警察が何処まで介入すべきか試行錯誤した

        このあたり、家庭に介入できずに殺されてから悔やむ日本の虐待と似たところがある。

        今回、世論は司法が正しく機能したことを評価した。
        だが、ともするとこうした事件のみから西洋文化の優越性を掲げ、イスラム文化を全て異端視して歪曲することがないように、との意見も多く見られた。





        | - | 13:20 | comments(0) | trackbacks(0) | - | ログピに投稿する |
        いじめによる問題の多さを問題視 立法で取り締まりを強化する動き
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          毎週金曜日発行の社会派週刊誌「週刊金曜日」                      
             月一回カナダ事情を発信      
                            
             
              第12回 2011年12月16日発行


           
                  12月カバー


          先月30日「もっと楽な世界に行きたい。自分の手で命を終わらせることを許して」と母親への遺書を残して自殺した15歳の白人の少女は、ケベック州の北にある地方都市の中学生。3年に及ぶ学友たちのいじめに耐え切れず自らの命を絶った。

           同日オンタリオ州議会では、教育省向けの「反いじめ法」の動議が議会に提出された。10月の州選挙で少数派政権になった自由党は苦渋を強いられているが、同法の成立には野党も合意し可決に向けて動き出た。

          中・高校で頻繁に起こるいじめによる自殺を政府が重く見て、立法で取り締まりを強化する構えだ。

           現在は、いじめで自殺したことが明白な場合、加害者を一定期間停学させるに止まっている。一時的には問題解決のため関係者が行動を起こすこともあるが、加害者の生徒は同じ学校に戻るのがほとんどだ。

          カナダでは同様の事件が毎年200件ほど起こり、新法が順調に機能すれば国全体に広がる可能性もある。

           一度いじめの対象になると、学校が真剣に取り組まない限り陰湿にエスカレートして行く。被害者の生徒の親や保護者が学校に苦情を申し立てても「この年齢にはありがち」と無視されることも少なくない。

           問題の発端は小さなことから始まるのが普通だが、同性愛者がターゲットになることが圧倒的に多い。また、多文化主義を国策とする国には、世界各国からの移住者がいるため、出身国がからかいの対象にもなる。

           この背景を受けて、新法は「人種、肌の色、出身地/国、性、性的指向、年齢、家庭の事情、障害者、宗教などの違いで差別することは許されない」と明言し、被害者・加害者双方のカウンセリングも義務付ける。加えて校長などの権限で加害者の生徒を退学させることも可能になる。

           カナダは20056月に世界で4番目の国として同性婚を承認した。開かれたカナダを印象付けたが、その後も彼らに対する嫌がらせや殺人事件は後を絶たない。そのため「要望があれば『ゲイ・ストレート同盟』(仮称)と言った組織を学校に設ける」と新法には謳われている。

           これにはカトリック系の学校が猛反対。「いじめ防止には協力するが、ゲイの性的指向は宗教的に容認できない」という。同性愛の聖職者が多いことは周知だが、今回も本音と建前を使い分けて対処する構えだ。  




          | - | 08:58 | comments(0) | trackbacks(0) | - | ログピに投稿する |
          ライフル銃規制廃止に動く政権と強い反対示すケベック州が対立
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             毎週金曜日発行の社会派週刊誌「週刊金曜日」                      
               月一回カナダ事情を発信      
                                   
                第11回 2011年11月18日発行

             
                   11gatsu

            今年5月の連邦選挙で多数派政党になった保守党の公約の一つは、各種ある銃器の中の、ライフル銃に関する登録制の廃止であった。

            1995年に自由党が制定した規制を、過去に3回も破棄する試みをしたが失敗。だがここに来て議席数の増加により、選挙公約を実行するため10月末国会に動議を提出した。

            通過する公算は非常に大きいが、世論は賛否両論が渦巻いている。

            現在ライフル銃を購入する場合、前科の有無、安全に関する教育の受講、入手するまでに28日間待機という規制がある。

            今回の「登録制の廃止」とは、国家警察が管理するこの手順をすべて廃止して、今まで管理していた本人の身元調査の記録も処理しようというものだ。
            この法規制維持には年間100万〜400万カナダドルが必要とされる。

            日常生活に銃などを必要としない人々には当然の法律で、これによって関連の殺人も減少すると予測される。

            だが、広大なカナダの自然と共存して生きる猟師、林業、農業、漁業などの従事者は、ライフル銃は自分たちの身を守るための道具で殺人に使う凶器ではないと主張する。

            保持者のほとんどは、正しい使用法を心得ており規制は時間と税金の無駄使いとも言う。ステイーブン・ハーパー首相は中央平原のアルバータ州の出身。選挙区には農業、牧畜業者などが多く法改正は悲願の一つであった。

            加えて、この秋カナダ統計局は国内の殺人率が44年振りに最低率になり、特にライフル銃での事件は過去15年で半分に減少したと発表。保守党には追い風の数字である。また、この銃絡みの事件は75%が自殺という。

            この連邦政府の姿勢に特に強い反対を示すのが、自由党政権のケベック州である。根底には1989年にモントリオール理工科大学で、精神錯乱の若者がライフル銃を乱射し女子大生14人を殺害した事件があるからだ。

            「銃がなければ葬式もない」と極端なスローガンを掲げる自由党は、銃保持者のデータが事件の解決に如何に役立っているかを力説。登録制の破棄はデータの削除という図式に簡単には従わない構えだが、ケベック州にデータ保持の例外を認めることはプライバシーの侵害と連邦政府は見る。 
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 独自の登録制も考慮するとの同州の強硬姿勢はハーパー政権との対立も予想され、今後の成り行きが注目される。


            | - | 01:49 | comments(0) | trackbacks(0) | - | ログピに投稿する |
            再開した随筆集『華やぎ』 秋号
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              トロントの熟年女性たち19人が集まって書く随筆集「華やぎ」が、3月の震災以来ストップしていた。

              日系社会を中心に、そしてまた多くのカナダ人たちも、限りなく広げた犠牲者たちへの義捐金集め。
              日が飛ぶように過ぎていった。

              秋になりやっと随筆集を再開をすることに・・・。

              素人集団ではあるものの、メンバー19人が年4回その時の思いを自由に書くクラブは、もう10年近くになるだろうか。



              華やぎ Oct.30/11


              随筆集「華やぎ」 2011年 秋号


              「レオニー」への想い、そのいきさつ 

                               

              どんな形でもいい。どんな物でもいい。
              だがいつも何かカルチャルな雰囲気に浸っていたいという「心の渇望」を私は常に抱えている。

              それが切れてくると、心がじわじわと乾燥して行くのを実感する。これは今に始まったものではないが、とても不思議な感覚である。

              ダウンタウンで週5日6人もの生徒の日本語教師をするのは、人と接する仕事のためこよなく楽しい。メディアのニュースを追って日加にまたがって週一本の割で締め切りをこなすのも知的満足度を得られて嬉しい。ホームページの更新は見知らぬ人と繋がれるドキドキ感がある。

              加えて、できるだけ公私に渡るソーシャルも欠かさない日々は充実しているのだが、そうしたこと以外にも、私はいつも何か文化的なプロジェクトのようなものを持っていたいという欲望に駆られる。

              それはまるで「止むに止まれぬ病」と言ってもいいかもしれない。

              そんな時、そのプロジェクトに共感したり、感覚を共有し同じ目線で物事を進めることが出来る仲間がいると、私は限りなく舞い上がってしまう。

              去年の夏私は、多くの方々のご協力のもと2年半をかけて書き上げた3冊目の本を上梓し、秋の初めには、4つものblogを併せたホームページの大改革を行なった。

              その後、充電のために日本で一ヵ月半過ごしたが、その間に訪ねた太宰治の足跡を追う青森の奥津軽、石川啄木の終焉の地である情緒豊かな函館の街への一人旅は言葉に尽くせないほど楽しく、行った先々で触れた晩秋の匂いが、今も鼻の先に蘇ってくる気がするほどだ。

              著作という大きな肩の荷を降ろした安心感と満足感は、私にとっては何にも代えがたく、本当に充実した年末から年始であったといえる。

              だが新年になってみると、また地割れのような乾燥した感覚が心の中に少しずつ広がって来るのをどう抑えようもなかった。

              もちろん新たなプロジェクトを開始する時は、ある日突然にその想いを行動に移すわけではない。心の中でじっくりと温めて徐々に熟成させ「ぱーん!」と弾ける瞬間を待つ。心に掛かっていた想いにグイと動かされ、抑えがたいある感覚が突き上げてくるのだ。

              今回こうした気持ちになった発端は、昨秋の訪日の折りにさかのぼるのだが、その時見損なった『レオニー』という映画への篤い想いなのだ。

              これは世界的に名を馳せた日米の血を引く彫刻家イサム・ノグチの母親、レオニー・ギルモアを描いたもの。私は拙著の上梓に追われていた昨春からこの映画のことを察知しており、秋に公開されることも承知していた。にもかかわらず、実に迂闊にも、離日前に見ることを予定に入れていなかった。

              そのことで「がん!」と頭を殴られたような思いを味わったのは、ある男性と日本橋でランチをご一緒した時だった。

              華やぎ Oct.30/11
              タウン誌「日本橋」 2010年11月号

              レジ近くに置いてあった『日本橋』という小さなタウン誌を手に取って何気なくパラパラとめくった時、「人−物語」と題するコラムに「女性の強さを描く−
              映画『レオニー』」と副題を付けた松井久子監督のインタビュー記事が載っていたのだ。

              「うっ、しまった!」と歯ぎしり。「どうしたの?」と連れが聞く。でももう遅い。私がカナダに戻るのは2日後で、ロードショウは5日後の予定だ。「変わらないな、君は」と連れが言う。

              さあ、それからというもの、トロントに戻ってもこの映画のことが頭から離れない。加えて、その年の年末に訪日したトロントの友人が東京で鑑賞し、映画館で素敵なプログラムを買って来てくれた。

              当然ながら私も、インターネットを屈指して映画の反響をくまなく調べもした。

              音声の入ったサイトでは、主演の女優エミリー・モティマーが「Mother I will go to Japan with my baby ・・・(お母さん、私はこの子を連れて日本という国に行きます・・・)」という含みのある声で語る部分が耳に残り益々想いがつのる。映画への片想いは膨らむ一方なのだ。

              さあ、この気持ちを満足させるにはどうすべきか?

              出した結論は、「ならば、この映画をトロントで上映しようではないか!」であった。それだけではない。「監督にもお越し頂いて、講演会も開催し一大イベントにしよう!」そう決心してしまったのだ。

              数年前に監督は「折り梅」を持って
              JCCCにいらしたが、その折に個人的に親しくお話しする機会はなかった。だが処女作「ユキエ」も併せ、2本の映画の名残りが心にあったことで、勝手に想像する松井久子監督の人となりに惚れ込んだことが大きかったと思う。

              華やぎ Oct.30/11


              週刊誌「アエラ」 5月23日号

              華やぎ Oct.30/11
              感動ものの「松井久子物語」である

              華やぎ Oct.30/11

              それから今日に至るまでの10ヶ月。超多忙な監督とのメールのやり取りが開始され、細々とした詳細が分かってきた。このいきさつは、すべてではないものの、私のblogの一つである『日本人の国際結婚』のセクションに開示している。http://saunders.jugem.jp/

              と同時に、日本版の
              DVDを監督が送って下さったことで私は3回も見たのだが、そのたびに感動し体が震えてしまった。

              ところで私が彫刻家イサム・ノグチに深い想いを抱くのは、「混血の子を持つ故か?」とよく聞かれる。否定はしないが、もっと深遠な想いがあってのこと。だが語る言葉を選べない。

              今のところ、トロントでの上映がいつになるか定かではないが、とにかく2年目に入る私のプロジェクトは、来年には日の目を見ることになるだろう。

              今回もまた「華やぎ」の主宰者であるバラル博子さんには多いにお世話になる予定だが、何よりもカルチュラルなことがお好きなことが本当に嬉しい。

              もう一つ私のプロジェクトで今年実現したものに、若いプロフェッショナルの女性たちを集めての物書きグループ「The Group of 8」を立上げたことがある。http://thegroupofeight.com/

              私にとっては子供のように年の離れた女性たちだが、熟年層の女性とは全く違った友情が育まれつつある。もちろん多大な時間と、細々としたやり取りの末に結成したグループだ。

              このグループが書く「カナダ発のニュース」はある意味で硬い。だが「人気におもねるものなど書きたくない」という視点を誰もが持っていることで強い団結も生まれている。一つのものを仕上げるには並大抵の努力では済まず、言い出しっぺの私はまとめ役を引き受けている。

              かくして今日も「絶対量の時間がたりない!」を口にしながら走り回っている。

              特効薬のない「止むに止まれぬ病」を抱える私は、きっと死ぬまでこの「持病」と付き合っていかなければならないのではないかと覚悟を決めている。

              | - | 10:05 | comments(0) | trackbacks(0) | - | ログピに投稿する |
              代理母と依頼者間のトラブル増加 厳重な法的規制なき取引に批判も
              0
                   毎週金曜日発行の社会派週刊誌「週刊金曜日」               月一回カナダ事情を発信
                        
                                              第10回 2011年10月14日発行


                 

                 

                                    代理母


                この夏、ネットで知ったある英国人夫婦の子供を、代理母として出産する予定だった20歳のカナダ女性の元に、テキストメールが飛び込んできた。夫婦が離婚することになったため約束を反故にして欲しいと言う。

                中絶するにはすでに遅く、女性は双子の女の子を産んだ。その後、幸運にも養子縁組を望むカップルが現れ子供は引き取られた。

                ここ30年ほど代理母関連の問題を扱って来たある弁護士は、このような事件はほんの氷山の一角で訴訟件数は毎年増加しているという。

                ただカナダでは、出産後に代理母が子供を手渡さないなどの親権に関する問題はなく、金銭に絡むものが主である。

                利他主義の見地からすれば、代理母の本来のあり方は「健康な女性が子どもを望む人の出産を無償で代行すべき」ということなのだろうが、実際には、如何なるケースも善行のみで行なわれることは絶対にない。

                代理母関連の機関であるカナダ生殖支援協会のサイトにも、経費の支払いは合法と明記されている。

                妊娠中の諸経費の支払いから始まり、休職する場合は給料を肩代わりすることもある。
                代理を依頼する側は健康で問題のない子供を望むのが心情。

                しかし悪知恵の働く代理母になると、それを利用して法外な経費を要求する例もある。金銭の上下限の規定はなく、机の下の取引が半ば公然と行なわれているのが現状だ。

                 冒頭の例のように、現在はインターネットの発達によって地球の何処に住む女性にでも、条件さえ許されれば代理母を依頼することは可能である。

                インドなどでは、それを「商売」にしている女性たちも多く、支払われた数千ドルが家の改築費に使われたなどがニュースになったりする。

                7月には、オタワ在住のゲイの男性が、ムンバイの代理母機関を通して出産を依頼して男の赤ちゃんの父親になり、その喜びの姿がユーチューブで公開されている。

                養子縁組などには厳重な法的規制があるものの、代理母産業の取り締まりは今のところ驚くほどあいまいで「無人地帯」と評する人もいる。

                人の命を商取引と同レベルで扱うことに対し厳重な取り締まりを望む声もあるが、今のところそのような動きはなく、しばらくこの状態が続きそうだ。 



                | - | 11:29 | comments(0) | trackbacks(0) | - | ログピに投稿する |
                米国式は嫌だが現状にも問題あり、望ましい医療保険を求め国民的議論
                0
                   毎週金曜日発行の社会派週刊誌「週刊金曜日」
                      月一回カナダ事情を発信
                         
                               
                      第9回 2011年9月23日発行
                   


                   
                      

                          ohip

                  カナダは、国民のヘルスケアの大方を国が負担する包括的医療保障制度を、1962年に当時の新民主党党首が成立させて以来、半世紀に渡りずっと維持し続けている。

                  これは資本主義国では余り例を見ない。

                  しかし、近年の人口増加、高齢者数の上昇、複雑化する医療問題などが絡み、特にこの数年各州ともサービスの低下が大問題になっている。

                  専門医に会うまでの長い待機時間、大混雑の病院、薬の高騰、医療従事者の不足などが原因で、国民の不満が続出。なかでも子供、メンタルヘルス患者、長期治療が必須の高齢者などが一番の犠牲者と言われる。

                  運営は各種の税金が軸になっているが、恒常的な予算不足が問題で、連邦や州選挙のたびに改革を公約にするものの改善の兆しは見えない。

                  国民の多くは、米国のように富裕層だけが享受できる私的保険制度のみになることを恐れている。だが、緊急時に公的サービスに頼っていては時間的に間にあわず、高額な保健に入り即治療を受ける人が近年とみに増加している。

                  中には、医療関係者の技量には全く問題ないが、医療関係者不足のため、州が患者を米国に移送することさえあり、後日治療代が支払われるケースもある。

                  しかしこうした恩恵に与かれない患者は、米国の医療機関をネットで捜し費用を自己負担する。当然治療費は莫大で、中には持ち家を抵当にして賄う人もいる。

                  後に裁判に訴えて経費を州に請求するケースもあるが、対象は「カナダでは治療不可能な場合のみ」で敗訴することが多い。

                  カナダからの患者は、景気低迷の米国では格好の収入源で、専用の病棟を用意する病院さえある。特に多いのが脳外科関連の治療で、カナダに近いバッファロー市、世界的に有名なロサンジェルスの病院などに人気が集中している。

                  こうした状況の改善を求め、今夏カナダ医療協会が「国民の声を行動に」と題して、国中でタウン・ミーティングを展開した。大きな街数ヶ所と、ネットでの参加者を合わせると数千人からなる大集会であった。

                  結果は93%の人が根本的改革の必要性を感じていたが、興味深いのは私的な制度を上手に組み入れ、公的なサービスと相互協力する声が多かったことだ。

                  先行きは不透明だが、待ったなしの改善は必須である。

                  ohip
                  オンタリオ州の健康保険カード


                  | - | 09:24 | comments(0) | trackbacks(0) | - | ログピに投稿する |
                  寛容な移民政策ゆえに不正も多数、排斥がおきる素地ありと警告
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                       毎週金曜日発行の社会派週刊誌「週刊金曜日」
                            月一回カナダ事情を発信
                                        
                             第8回 2011年8月26日発行
                     
                     
                            極右翼


                    極右思想のノールウェー人によるテロ事件の容疑者が、犯行前にインターネットに載せた膨大な文書には、カナダについて「白人至上主義の同盟国となる可能性はあるものの下層階級の移民は厄介者」と書かれている。また、イスラム系の学生が多いトロント市内の大学や、社会派の論客として知られる女性活動家を名指しで攻撃もしている。


                    極

                    「イスラム排斥」「移民反対」を主張する容疑者には、カナダのあり様は決して好ましい国とは映らなかったようだ。カナダは人口に占める移民も割合が19%にもなり、特に昨年は28万人もの移民を受け入れており、過去50年で最高の数字を記録した。詳細は30%が移民資格を取得した本人、30%が配偶者、26%が家族、14%が難民である。

                    2036年までには人口の25%が65歳以上になることを考慮すると、年間100万人が理想とのことだが、これはあくまでも机上の空論。移住後の社会保障、教育、医療関連だけでも莫大な費用となり、赤字政府にとってはあり得ない数字である。

                     
                    極右翼

                    トロントの地下鉄の駅などに見られるカナダ移民局のポスター

                     

                    しかし、世界に冠たる移民国カナダを「希望の国」とする人は増える一方である。数が増大すれば伴う問題も複雑化する。政府は先月、偽
                    IDの保持者、政治犯、戦争犯罪者などを含む1800人もの偽装移民を摘発すると発表した。寛容な移民政策を巧みに利用してカナダのパスポートを入手する人が後を絶たない。

                    中には中近東の富裕層が、移民条件を満たさないのに市民権を取得。直ちに夫は高収入を得る本国に戻り、残された家族は高級住宅に住みながらギリギリの所得申告で税金逃れをし、皆保険制度や教育無償化の恩恵を得る、と言ったケースもある。

                    2、3代さかのぼれば、先祖はやはり何処かの国から来ているカナダ人は、一般的に移民に寛容だ。だが胸に卍の刺青をした白人至上主義のグループも存在する。ノールウェーのテロリストとは見解を異にすると言うが、彼らは「カナダは欧州系の白人が支配すべき国」と強調する。

                    こうした嫌悪な過激主義者たちの動向を調査し、100人ほどをインタビューしたある識者は「ここでも同様な事件が起こる可能性は否定できない」と言う。彼等の動きに目を光らせる警察も「一歩間違えば、一般人を巻き込む事件が起らない保証はない」と警告している。


                    | - | 23:57 | comments(0) | trackbacks(0) | - | ログピに投稿する |
                    アフガニスタンからカナダ軍撤退開始 懸念される兵士の立ち直り
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                         毎週金曜日発行の社会派週刊誌「週刊金曜日」
                             月一回カナダ事情を発信
                             


                               第7回 2011年7月22日発行

                                  アフガン

                      6月末にオバマ大統領は米軍のアフガンからの撤兵方針演説を行った。呼応するかのように7月7日にはカナダ軍の国際治安支援部隊(ISAF)が、年内完了の予定で撤退を開始した。多国籍軍の大規模な部隊の中では今年最初の動きである。

                      この決定は08年3月のカナダ政府の承認によるが、来年からは950人ほどが首都カブールでアフガン治安部隊の訓練に当たる。

                      カナダ軍の派兵は02年に開始され、06年からはアフガンの中で最も危険とされるタリバンの牙城である南部カンダハル州を中心にパトロール活動などを行ってきた。

                      戦死兵は157人で米国の1658人に比較すれば少数だが、出兵数に対する死者数の比率はカナダ軍が19人に一人、米軍が54人に一人の割合で、ISAFの中ではカナダが一番の死者を出したことになる。


                      アフガン 

                      何故カナダ軍がこのような危険な地域に配属されたかは、911の後にブッシュ前大統領が開戦したイラク戦争に遡る。当時カナダは戦争への真意を図りかね、隣国に対し「No」を突きつけた。

                      大国の隣にあって、この決定がどれ程のインパクトを引き起こすか心配する向きもあったが、国民の多くは政府を支持したのである。このような過去が、今回アフガン戦争でカナダ軍を危険地域へ派兵することになったと言われている。

                      アフガン

                      まだ撤退まで半年あるが、兵士の帰還で懸念されることの一つは帰国後の精神的な立ち直りである。

                      アフリカのルワンダ紛争で平和維持軍の司令官としてカナダから着任したロメオ・ダレール氏(「戦禍なき時代を築く」の著者、サンダンス映画祭で国際ドキュメンタリー部門観客賞受賞)は、100万人近い虐殺を目のあたりにして心的外傷後ストレス障害に陥った。

                      その経験から「戦争に関わった人々の立ち直りは終戦から始まり、そのための代価は計り知れないほど高い」と言い、「アフガン戦争は兵士にとって『勝利の凱旋』ではない。死が隣接する日々は去っても不完全燃焼の思いを抱え、平和な国での生活再開は兵士のみでなく家族にも辛い試練になる」と力説する。

                      アフガン

                      軍隊にはこうした過度期を乗り越える「方法学」のプログラムは揃っているが、参戦以来、帰国兵士の自殺は12人を数える。

                      アフガン


                      (Photos:fromCBC)



                      | - | 07:23 | comments(0) | trackbacks(0) | - | ログピに投稿する |