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寄稿文 カナダ - 日本

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冷酷な時の流れ
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    ビクトリアの昨今

     

     COVID-19の話題はもう止めようと思いつつ、ついそちらに話題が行ってしまう。

     

     国の中央周辺から少し遅れて、西海岸のビクトリアの人々の間に本当の緊張感が走ってからヵ月。各方面での日常生活が大幅に規制され、嫌が上にも「コロナ」と言う見えない魔物に怯える日々が続く。

     

     そして日々変わる国や州からの規制の目まぐるしさ。

     

     「負けるものか!」とは思っても、感染者や、死亡者数が日々数字で示されると、何処にも持って行きようのない「怒り」に続く「萎え」を繰り返し感じる。だが人は「慣れ」と言う順応性を持っているため、不自由であることが段々と日常化され、それが毎日の生活の支流を占めるようになっている。

     

     「今まで人間は余りにも贅沢をし過ぎ傲慢であったから、これは神からの見せしめだ」と分かったような声も聞かれる。そんな意見に賛成かどうかは別として、一番辛いのは気心の知れた人々と気軽に会えない事だ。

     

     だが第二波にびくびくしながらも、最近は規制が多少緩んできた。先日親しい友人と午後の暖かい日差しを浴びながら、レストランのテラスでワイングラスを傾けた時の解放感は「Splendid!」の一言に尽きた。

     

     お互いにどんな暮らしをしているかを話し乍ら、コロナに対するカナダ人的、日本人的な考え方の相違などを大笑いしながら指摘し合い、忌憚なく思いを語った。実に胸がすく一時であった。

     

    心に残る名画

     

     人間は一人で体験できることに限りがある事を思えば、自分とは異なった人々と交わり、人生体験を聞き、歓喜し、共鳴し、同情し、激怒し・・・そこから自分の人生の幅を広げていけることが私は何よりも好きである。

     

     読書からも同じような知識は得られるが、他にも映画鑑賞によって知らない世界に足を踏み入れることが出来るのは実にワクワクとするものだ。

     

     学生時代から私は実に多くの映画を観てきたが、それは取りもなおさず、スクリーンに映し出される人々の生きざまに興味が尽きないからだ。

     

     以前とは異なった時間を過ごす昨今。昔見た幾つかの作品を思い出し、再見する機会を持つことを心掛けている。

     

     スペクタクルなアメリカ映画もさることながら、中でも興味をそそられるのは、ヨーロッパで制作された作品の数々だ。

     

     特にイタリア映画は、人情味が溢れ人生の機微を見事に表現した忘れられない秀作が多い。大道芸人の悲哀を描いた『道』、戦争によって引き裂かれた夫婦愛の物語『ひまわり』、父親と息子の悲しい魂の触れあいを描いた『メリーゴーランド』等など。

     

      

     

     

     数えたら切りがないものの、私の心に一番印象深く残っているのは、第二次世界大戦後のイタリアを舞台にした『ブーベの恋人』である。終戦の混乱期には、まだ人生経験の浅い平凡で未熟だった一人の女性が、死亡したパルチザンの兄の仲間だった男性(ブーベ)を愛するようになってから、女性として成長して行く社会派メロドラマである。

     

     これは1964年の作品で、当時のイタリアの家父長制度が日本と似通っていることに驚いたのを覚えている。

     

       

     

     この主役を演じたのは、アメリカ映画史に永遠に残る名作ミュージカル『ウエストサイド・ストーリー』で、素晴らしいダンスと演技で鮮烈な印象を与えたジョージ・チャキリスである。

     

    プエルトリコの若者ベルナルド役

     

    ベルナルドの恋人役 リタ・モレノ

     

    小泉八雲役のジョージ・チャキリス

     

     その彼が50歳になった1984年に、NHK制作の『日本の面影』と題する小泉八雲役に挑戦したドラマを、今回初めて見る機会を得た。

     

     『ウエストサイド・ストーリー』ではプエルトリコ人ベルナルド役で癖のある英語を、またブーベ役ではイタリア人男性を演じたが、一転して八雲役では特訓を受けて、まったく流暢とは言い難いものの、日本語を話していることには驚きを禁じ得なかった。

     

    八雲の妻、小泉せつ役の檀ふみと

     

     俳優であれば当たり前かとは思うが、彼のひたむきな挑戦には賛辞を送りたい。よく知られるように、八雲は子供の頃の事故で左目に障害を持つ身であったため、チャキリスも片目での演技をこなしている。

     

    片目を閉じて八雲役を演じる

     

     あの鮮烈な印象をぬぐうことが出来ないベルナルド役、片目の八雲役。どちらも同じジョージ・チャキリスではあるが、円熟したその変貌振りには深い感慨を覚えた。

     

     

     

     しかし彼を始め『ウエストサイド・ストーリー』で恋人役を演じたリタ・モレノ、抗争のギャング役ラス・タンブリンも今は皆85歳。

     

    ラス・タンブリン(右)

     

     マリア役のナタリー・ウッドは水の事故で不慮の死をとげ、悲恋の相手役リチャード・ベイマ―は82歳。

    リチャード・ベイマーとナタリー・ウッド

     

     「当時美男美女で売り出した俳優たちの老いた姿を見るのが好き」なんてちょっとひねくれた事を言う友人は「何だあれほど人気があっても、年取ると我々と同じか!?」と思うのがいいそうだ。

     

     これを聞いた時はおかしくて大笑いしたが、私は出来る事なら見たくない。人気絶頂の華やかだった昔日の記憶を消したくないからで、ネットで「今」の検索はしたくない。

     

     世の中がどうあろうとも、抗うことの出来ない時の流れは非情に過ぎて行く。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

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