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寄稿文 カナダ - 日本

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身体障害者5級
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     渋谷


    訪日のある一日、私は渋谷に向かう電車に乗っていた。

    日本での定宿である親戚の家から、渋谷・文化村で開催
    されていた「藤田嗣治展」を友人と一緒に見に行くため
    だった。

     

    東京都心に働く人たちの憧れの沿線とやらの田園都市線。
    とにかく明るくて清潔な上、日本なら当たり前の時間通
    りの到・発着。利用するたびにトロントの交通機関を思
    い出し、この鉄道技術をなんとかカナダに持って来られ
    ないかとの思いに駆られる。


    今は日本中どの鉄道も同じと思うが、各車両にはシニア、
    身体障害者、妊婦用に数席が用意されておりこの路線も
    例外ではない。

    いまや私は、年齢から言って名実共に堂々
    とここに座れることが嬉しく、その時も乗車してから
    2駅ほどで窓側に腰掛けることが出来た。

     

    と次の駅で、女性2人のお年寄りが乗って来た。私の右隣
    が空いているのを見て急ぎ一人が座ったのだが、お連れ
    の方はよろけながら立つことを余儀なくされた。

     

    私はちょっと待ったものの見かねて席を譲った。なぜ一瞬
    待ったかといえば、一方の端に、イケメンの堂々たる体躯
    30代半ばとおぼしき若者が座っているのを知っていた
    からだ。しかし彼はそ知らぬ風情で新聞を読んでいた。

     

    私は押さえがたい理不尽さを感じ、立ち上がり際に
    What a healthy looking young man!」と小声ながら、
    しかしはっきりと彼に聞こえるように言った。もちろん
    最上級の皮肉をこめた積もりであった。

     

    そして次の瞬間ふと職業意識が頭をもたげ、この出来事を
    しっかりと記憶に留めて置きたいとの思いから、少し離
    れた移動先の場所からパパラッチよろしく写真を一枚
    撮った。


    そうこうするうち電車は渋谷に到着。ご存知の人混みで
    ある。
    出口を一つ間違えたら、北米のハイウェーで異なった

    exitに降りた時のように、とんでもない方向に行って
    しまう。

     

    私は立ち止まり「文化村」というサインを探しながら
    歩き始めた。とその時、先ほどのすらっと背の高いイケ
    メン男性が近づいて来て「あなたさっき写真を撮ったで
    しょ。それを見せて下さい!」と怒りをあらわに話し
    かけてきた。


    私は「気付いていたの?!」と思いながら、しかし
    冷静に「はい」と言いカメラをバッグから出す際
    にさっと削除してしまった。

     

    驚いた青年は急ぎ駅員を呼んで事情を説明。
    押し問答が続いたため困った駅員は、「すみません
    がちょっと一緒に公安室まで来てください」と促す。
    もうまな板の上の鯉である。


    だがここでもまた悪しき職業意識が働き、私は「これ
    は面白い体験が出来るぞ!」とほくそ笑み、慌てる
    ことなく「分かりました、ご一緒しましょう」と返事
    した。

    その時すでに
    3人にもなってしまった駅員と青年と
    私で『関係者以外立ち入り禁止』のサインのある
    部屋に連行(笑)された。


    ラッキーだったのは、展覧会場前で友人と待ち合わせ
    る迄には
    30分ほどあったため、この一連のことを駅
    員たちがどの様に進行させるかを冷静に見守ること
    ができたことだ。


    まず青年と私を別々の部屋で事情徴収し、彼の言い
    分を駅員が私に伝えた。何も間違いはないため私は
    「その通りです」と返答し、私も電車内での状況と
    その時の気持ちを駅員に伝えた。

     

    それを聞いて駅員は深く頷きながらも「あのお客さ
    んは身障者手帳を持っているのですよ・・・」と
    明らかに困惑した表情で言う。


    青年の外見からにわかには信じがたい私は「一体何
    処がお悪いのですか?」と思わず聞き返してしまった。


    その質問に駅員は答えず「こちらに来てください」
    と言い、青年と私を今度は同じ部屋の机を挟んだ
    位置に座らせた


    取り上げて保管されていたカメラ
    を駅員が私に戻したのを見た青年は「中を見せてく
    ださい!」と言う。私は躊躇することなく次々と
    写真をクリックしたが証拠写真はない。


    腹の収まらないイケメン青年は、今度は「何か英語
    で私を罵倒したでしょう!」とか、男性の手にして
    は“とても美しい白い手の甲”にある一センチにも
    満たない切り傷を指し、「さっきカメラを取り合っ
    ている時にあなたの爪で引っかかれたんですよ!」
    と見せる。

     

    私はよく観察するために腰を浮かせ彼の手に顔を近
    づけたのだが、もみ合いからまだ
    15分足らずにも
    関わらず、すでに血は黒っぽくしっかりと固まって
    いる。


    私は「血ってそんなに早くカサブタになるも
    んですか?」と疑問を投げかけた。青年は「そんな
    こと言うなら警察に行きましょうか!」とたたみかける。

    イケメン青年

    友人との待ち合わせがなかったら、私は速やかに「そうし
    ましょう」と言いたかったのだが、時間は刻々と迫っている。


    もう謝ってしまわなければ解決しないと見て、証拠写真は
    ないものの写真を撮ったことに対し私は「すみませんでし
    た」と謝罪した。

     

    これを聞き彼は「その言い方は心から言っているように聞
    こえません!」と言う。「じゃどうすればいいですか?
    日本人がよくやるように、床に土下座して頭を下げて欲し
    いのですか?」と私。
    「そんなこと言っていません。
    でも心から言っているように聞こえません」を繰り返す。


    更なるやり取りの末に私は「ところで身体身障者とのこと
    ですが、カードを見せてください」と言った。

     

    名前の所に指を当ててさっと見せてさっと隠した小さなカー
    ドには、漢字が
    78個並んでおり瞬時に記憶に留めるのは
    不可能だし、写真は更に小さいため、果たして本当にこの
    青年かどうか判断しかねた。

     

    だが「5級」と書いてあったのだけは読み取れたため、私は
    すかさず「
    5級と言うのはどの程度なのですか?」と聞くと
    「そんなのは自分で調べてください!」とのたまう。

    後にインターネットでチェックしたところによれば、「1級
    が重度で数が増すごとに軽くなり、等級は
    56度まである」
    と書かれ「等級は障害度によって付けられ、
    身体障害者手帳
    は更新の必要が無く、一度認定を受ければずっと使い続ける
    ことが出来ます」とのことだった。

    彼がこれに匹敵するかどうかは知る由はない。
     

    しかし一見とても健常そうで、公安室に行く時の歩行に困難
    は見受けられず、本当に元気に見える若者も「身障者カード」
    の保持者となれば、それは「水戸黄門の葵の御紋」に指摘
    することになる。

     

    誰が何と言おうと数少ない身障者、シニア、妊婦用の席に
    堂々と座る権利があるわけで、彼はきっと「あなたに何か
    言われる筋合いはない」と思ったのだろう。

     

    となれば、私も一見健康そうに見えるもののシニアだし、
    長く立っていれば腰や脚が痛いからと、足のふらつくお年
    寄りが立っていようがそ知らぬ顔で
    座り続けることは出来
    るわけである。

     

    だがそうは思っても、私には“人として”そんな無慈悲な
    行為は
    決して出来ない。
     

    時間がなく警察に行けなかったことは返す返すも残念だが、
    果たしてこのケースが裁判沙汰になったら、日本の司法は
    どのような裁きをするだろうか?

     

    イケメン青年





     

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