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寄稿文 カナダ - 日本

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ビクトリアで見るイサム・ノグチ
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    ヒラリー氏

     

     

    それは勿論レプリカなのだが、それにしてもあの有名な彫刻家の「レッド・キューブ(Red Cube)」と呼ばれる赤い彫刻をビクトリアで見ることが出来るとは誰が想像しただろうか!

     

     

    ある日、ビクトリアの町を南北に走るCook St. を北に上がり、シャクナゲの花で有名なPlayfair Parkに出かけた帰り、辺りに咲くハナミズキ、藤、木蓮、ライラックの花々を愛でながら運転していた時、パッと目に飛び込んできたのがあの赤い彫刻だった。

     

    町中に点在して咲くハナミズキ

     

    一瞬自分の目が信じられなかった。「ここはNYではないわよね?!」と思わず自問したが、まるで何かのイル―ジョンでも見ている気さえした。私は「まさか・・・!?まさか!?」を連発しながらブレーキを踏もうとした。だが後車が迫っていたため、そのまま運転を続け近所の道をグルっと廻って元の場所に戻った。

     

     

    しかしそれは夢でも幻想でもなく、木々の間から見えるのは紛れもなくイサム・ノグチのあの彫刻だったのだ。急ぎ車を降り、吸い込まれるように“物体”のそばまで走り寄った。その家は当地で良く見られる奥に広がる細長い土地で、前面に家が一軒建ち、脇の細長いドライブウェイに沿って進むともう一軒が奥に建っている敷地。彫刻はその奥の家のちょっと小高くなっている前庭に置かれていたのだ。

     

     

    私は「う〜っ!」と唸りながら、ためつすがめつ眺めていたところに家主がBMWの素晴らしいスポーツカーでご帰還になった。私は慌てて無断で庭に入った無礼を詫び、如何にこの彫刻が好きかを説明した。中年のその男性はニコニコしながら快く「No problem」と言い、写真撮影の許可もくれた上、私の矢継ぎ早の質問にも答えてくれた。

     

    知っている人も多いだろうが、この彫刻のオリジナルは2001911日のNY同時多発テロ事件が起こったすぐ近くに置かれている。しかしあの大惨事にもかかわらず、びくともしなかったのだ。

     

    NYのグランド0近くに立つ本物のRed Cube (2005年)

     

    まず私は何故この作品に引かれ、自宅の庭に置こうと考えたのかを聞きたかった。だが答えはあっけないほど簡単であった。ドイツ系カナダ人の彼はAir Canadaのパイロットで、職業柄何度もNYに行くため、回を重ね見る内に愛着が湧き、今の家を新築した時に鋳物屋に頼みレプリカを造って貰ったのだと言う。

     

     

    彫刻家自身のことは、日系アメリカ人のアーティストだったと言う以外は余り知らないようで、ロング・アイランドにあるイサム・ノグチ庭園美術館(http://www.noguchi.org/)にも出かけたことはなく、ましてや香川県牟礼町にある同名の庭園美術館(http://www.isamunoguchi.or.jp)のこと等はまるっきり知らなかった。

     

    NY Long Island の庭園美術館 (2005年)↓↑

     

    高松・牟礼市の庭園美術館の入り口(園内の彫刻は撮影禁止)2016年

     

    だが私が余りにも熱心に話すのに引かれてだろうか、「チャンスがあったら将来行ってみましょう」とは言ってくれた。しかし家の前に見えるFor Saleのサインに私がいぶかると「そう、この家は先日売ってしまってね」と言うではないか。「じゃ今度の家主もこの彫刻が好きなのですね?」と聞くと「Oh No!」力強く言い「これを取り去ることが売る際の条件だったんですよ」と笑う。

     

    「ではどうするのですか」の質問には「いやちょっと迷ったけど、ドイツに住む母親が欲しいと言うからタンカー船で運ぶことにしているんです」と言う。本来のパイロットと言う職業以外にも不動産の売買を手広く手掛け、雪だるま式に富が富を生むビジネスを展開しているように見受けた。

     

    「ああここにも一人、実にビジネスマインドをしっかりと持つドイツ人系の人がいるのだ」と心底感心してしまった。もしかしたら、ヨーロッパでこの作品が売れる目途さえ付いているのかもしれない。

     

    世界のあちらこちらに作品を遺し、後世に名を知られるイサム・ノグチ。日米の狭間に生れ育ち「アイノコ」等と言った言葉が堂々とまかり通っていた時代に、日本にもアメリカにも寄って立つ場所を見付けることが出来なかった孤高の彫刻家。晩年は安住の地を牟礼に見出し、純日本的な生活をしながら多くの作品を生み、自分で彫った卵型の石の彫刻の中に遺灰を納めてしまった。

     

    庭園内の高台から瀬戸内海を望む。ここに卵型の石像が立ち遺灰が納めれれてる

     

    ちなみに、ほとんど世に知られていない彼のアメリカ人の母親の名を冠した映画(レオニー/Leonie)は、松井久子と言う監督によって2010 年に世に送り出された。

     

    今思い出しても懐かしいのは、2013年にトロントの日系文化会館で初めて「Japanese Film Festival」が設立された時、その第一回目の華やかな開催に伴い、当時私が所属していた女性グループが監督を招待し盛大な上映を行ったことである。

     

    松田久子監督の作品 「レオニー」(Leonie)

     

     

     

     

     

     

     

    | - | 23:30 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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