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寄稿文 カナダ - 日本

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帰巣本能
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    望郷

    最近シニアになってから「生まれ故郷に帰ろうか・・・」と迷う人の話をよく耳にする。もちろん日本人の場合は日本へとなるのだが、例えばイタリアやメキシコからの人たちも、彼等とのふとした会話から、そんな思いを感じている人に出会い驚かされることがある。

     

    どの人もすでに何十年もカナダに住み、当地での生活に慣れて心身ともに自由に暮らしている。だが歳と共に生まれた故郷への思慕がつのって迷いが生じるのであろうか。

     

    これは経済的に豊かで、度々本国に遊びには帰ることが可能な人達でも、それゆえに返って、年齢と共に精神を癒してくれる(かもしれない)場所が懐かしいようだ。

     

    動物には帰巣本能というものがあり、そのために鳩は巣から離れても再び戻って来られるし、犬や猫もかなり遠くに連れて行っても飼い主の元に戻ってくることが多いと聞く。

     

    また人間の場合よく例に挙げられるのは、罪を犯して何年も逃走し続けても、年月が経つと故郷が懐かしく「ちょっと・・・」という思いで戻ってくることがあるため、警察はこうした生得的能力を利用して犯人逮捕につなげると言われる。

     

     

    面白いことにこの帰巣本能は男性の方が女性より強いそうで、当然ながら年齢によっても差があるようだ。しかし例え故郷が緑なす田舎で、昔は野原を駆け回って遊んでいた懐かしい思い出があっても、♬ウサギ追いしかの山、小鮒釣りしかの川・・・♬が、今も同じであえない事は大方の人は知っている。

     

    そんな原風景に再びお目に掛かれるとは思えなくても、故郷が懐かしく思えるのが「望郷」と言うものなのだろう。

     

    終わった人

     

     

    この23年日本で非常に話題になっている作家・内館牧子の『終わった人』という小説がある。すでに読まれたり、映画化されたのを観た方も多いかと思う。

     

    これは日本の典型的なサラリーマンの退職後の人生を描いている。毎日が日曜日になった主人公は暇を持て遊び、何とか退屈な日々から逃れようと職業安定所のハローワークで高齢者向けの職探しをしたり、カルチャー教室に通ったりと試行錯誤する。

     

    だが高学歴と立派な職歴がネックになり、思うように舵を切れず悶々とした日を送る。

     

    そんなある日、スポーツジムで知り合った新興のIT企業社長と出会い、思わぬ人生の転換が訪れる。だがそれも23年後には借金を背負って潰れ、理想とした輝かしい退職後の人生が送れない。

     

    それに並行して専業主婦だった妻は、子供が巣立った後に美容学校に通って資格を取り、近所の美容室でつつましく経験を踏んだ後、自分の店を経営するまでになって行った。

     

    当然ながらギグシャクとした夫婦関係になり、それにピリオッド打つために二人は「遠距離婚」を選び夫は生まれ育った盛岡に戻ることを決心する。

     

    ビクトリア市は盛岡と姉妹都市。両市友好の印である鋳物で出来た鐘が、ビクトリア・ハーバーに近い公園に設置されている。勿論鐘が重いのは分かるのだが、以前当市の市長だったという某建築家がt造った支えの枠組みは、頑丈な出来ではあるものの何とも頂けない。もう少し優雅にできなかったものか?!

     

    勿論そこ迄決心するには長い心の葛藤があるものの、家があり、親兄弟が居て、友が居る故郷は彼にとっては何よりも心の安らぎを与えてくれる場所なのだ。

     

    東京を離れる日が近い真冬のある夜、同郷の友と酒を酌み交わした二人は、したたか飲んで別れを惜しんだ。その時友人の口から出た言葉は「胡馬(こば)北風に依(よ)る」であった。彼は「北方で生まれた馬は、北風が吹くたびに故郷を懐かしむ」という意味だと説明する。

     

     これはあくまでも想像の世界の小説ではあるものの、ふと室生犀星の「「ふるさとは、遠きにありて思ふもの〜」で始まり「遠きみやこにかえらばや」で終わる『抒情小曲集』の中の詩が頭をよぎった。

     

     架空の人物たちの物語ながら、主人公に心からのエールを送りたい。

     

     

     

     

     

     

    | - | 07:00 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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