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寄稿文 カナダ - 日本

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ビクトリア大学のブッククラブ
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     ヒラリー氏

     

    コクーン症候群

     

     去年の春行われた東京大学の入学式で「社会には、あからさまな性差別が横行している。東大もその一つ」と喝破したのに続いて、大学で学ぶ価値は「すでにある知を身に着けることではなく、これまで誰も見た事のない知を生み出すための知を身に着けることだ」と祝辞を述べた女性学のパイオニアで社会学者の上野千鶴子東大名誉教授を「知らない」と答える人は少ないだろう。

     

     

     著書は数えきれないほどあるが、2010年に著した『ひとりの午後』(NHK出版)と題した本の後書きには「コラボが好きである。それも未知な領域の人と組んで、自分でも知らなった未知の自分が引き出される経験を味わうのが楽しい」と。

     

     そんな気持ちを持っているからか、一介の物書きに過ぎないカナダ在住の私が著した『カナダのセクシュアル・マイノリティ―たち』という本を上梓した折りに、当時東大大学院のゼミで教えておられた氏に招かれて、学生たちに拙著を紹介させてもらった。

     

     

     引き続きその夏は、「山梨のコテージで缶詰になって仕事をするから」と氏がおっしゃるので、東大の真横のご自宅に一ヶ月ほど泊めて頂いた。

     

     こんなことを長々と書くのは、上記著書の後書きに強く共感するからだ。一般人の場合は、一人の人間が一生に知り得る人の数などたかが知れている。特に歳を重ねていくと、知人、友人の範囲が徐々に狭くなって行く。それを人呼んでコクーン(ミノ虫)症候群という。つまり、自分の殻に閉じこもって新たな出会いを求めないことを言うのだ。

     

     そんな生き方はしたくないと常々思っている私は、上野氏のこの言葉にとても共感する。ともすると同じ顔ぶれ、同じ仲間との交流しかしない日々では新たな発見は少ない。 

     

    松田解子(ときこ)を読む

     

     去年の秋から、ビクトリア大学Pacific & Asian Studies学部のSujin Lee助教授の呼びかけで、韓国人、中国人、日本人など数人が集まりブッククラブが発足した。

     

     

     年齢層は同大の助教授や学生、リタイしたシニアと顔ぶれは多彩で、今は月一回の会合ながら、新たな人々との交流に好奇心を触発されている。Lee助教授は韓国出身だが、日本語、英語共に母語同然に遜色なく集りは日本語で行われる。

     

     読本は日本の松田解子と言うプロレタリア作家が、昭和12年(1937年)に書いた「生殖線」と言う小説。社会的地位の極端に低かった戦前の日本女性が、結婚の有無によらず、大方が通過していく性、妊娠、出産、子育ての体験を通して当時の日本社会のあり様を描いている。

     

     

     この作品ばかりではなく、彼女の著書は一貫して声を発することの出来ない市井の人々、虐げられた労働者たちなど、20世紀初頭の社会革新の動きを中心に、資本主義への発展の側面を描いたものが多く、作家自身の生きた時代が強く背景に滲み出ている。

     

     生れは1905年(明治38年)で、当時存在した秋田県の荒川鉱山村。土地の小学校を卒業後、鉱山の事務所でタイピストとして働きながら文学に触れていった。 

     

     その後は秋田女子師範に入学し母校の小学校に赴任したが、21歳で職を得て上京。労働運動を通して知り合った大沼渉と結婚し、家庭を築き子育てを経た事が初期の作品に生かされている。

     

     亡くなったのは99歳になった2004年(平成16年)で、文字通り明治、大正、昭和、平成の4年号を生き抜き、今で言う「人生100年時代」を地で行った女性であった。

     

     解子の生存前後に婦人解放運動で活躍した女流作家たちには、平塚らいてう、与謝野晶子、田村俊子などがいる事も時代を反映していて非常に興味深い。

     

     

     

     

     

     

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